顔の美容外科とまぶたの専門治療
眼瞼痙攣
眼瞼痙攣(けいれん)とはあまり聞きなれない病気ですが,実際には非常に多い疾患です。光がまぶしく感じる方の多くが眼瞼痙攣で、成人の2-3割は程度の差はあれ眼瞼痙攣の状態といえます。かなり高頻度でみられる病気なのですが、困ったことに眼瞼けいれんは病気のメカニズムが不明です。根本的な治療が無く、対症療法も限られている難治性の疾患の一つです。
眼瞼痙攣 症状&治療
眼瞼けいれんは眼瞼下垂と混同されやすい病気ですが、眼瞼下垂はいわば目を開ける力が弱くなる病気に対し,眼瞼痙攣は眼を閉じる力が強すぎる(脳が目を閉じてしまう)病気です。これに逆らって一日中眼を開けているのはとてもつらく、特徴的な症状が出現します。はじめは軽い症状でも,眼瞼痙攣の負のスパイラルに陥ることで重症化していきます。
症状
- 目の疲れ
- 体の疲れ
- 光がまぶしい
- 昼間とても眠たい
- 目を閉じていた方が楽である
- 眼がしょぼしょぼする(ドライアイ)
- 肩こり
- 頭痛
- 眼の奥の痛み、目の周りの痛み
治療
眼瞼痙攣の治療はあまり容易でありません。名医とされる先生方は色々工夫をされて治療されています。当院でも眼瞼痙攣の治療を行っております
1.眼瞼痙攣の原因の治療
まぶたを強く閉じてしまう原因がわかれば,その治療を行います(ドライアイ,前眼部異常,眼瞼下垂,逆まつげなど)。原因がわからないケースや,疑わしい原因を治しても眼瞼痙攣が続くことが少なくありません。特に眼瞼下垂やまぶたのタルミが原因になっていることは多く、これらを治療することで眼瞼痙攣の半数以上が治ることを経験します。
眼瞼下垂症手術や、眉下切開などがしばしば行われます。
2.ボツリヌストキシン注射
眼瞼痙攣は眼を閉じる筋肉が強すぎますので,その筋力をボツリヌストキシン注射でコントロールします。対症療法ですが眼瞼痙攣の負のスパイラルを断ち切ることで調子が良くなることが多いです。
ボツリヌストキシンにはいろいろな注射の方法があり,その部位や量は痙攣の状態によって変わります。ボツリヌストキシンはまぶたに注射する際の痛みがネックになりますが,当院ではなるべく痛みが少ないように極細(34G)の注射針で注入します。効果の持続は3-6か月間です。
3.眼輪筋(閉瞼筋)切除
強すぎる閉じる筋肉(眼輪筋,皺眉筋)を手術で減らします。ボツリヌストキシン注射と異なり効果は持続しますが,切り取る部位や量の加減が難しい手術で、複数回の手術が必要になります。
4.下眼瞼ミュラー筋手術
上眼瞼や下眼瞼のミュラー筋の緊張が眼瞼痙攣の原因になっているケースでは,その緊張をとる治療が奏功することがあります。
5.ADM手術
上眼瞼のミュラー筋の緊張が眼瞼痙攣の原因になっているケースでは,その緊張をとる治療が奏功することがあります(当院では行っておりません)。
6.内服治療
筋肉の緊張を軽くする薬の内服。
ボツリヌストキシンが効かない眼瞼痙攣
ボツリヌストキシンを注射しても治らない眼瞼痙攣は少なくありません。(例:一度目は少し効いたが,2度目からは効かなかった)
患者さんがボツリヌストキシンに抵抗する抗体を持っているため効かないとあきらめがちですが,実際に抗体が存在するケースは稀です。
ボツリヌストキシンが効かない理由は,ボツリヌストキシンの効きを妨げる要因を持っている患者さんが多いためで,その要因を除けばボツリヌストキシンが劇的に効くようになります。ボツリヌストキシンが効かないタイプの眼瞼痙攣はご相談ください。
”まぶたが重い病気”について
まぶたが重い病気には眼瞼下垂以外にもいくつもあり、眼瞼下垂手術一辺倒だけでは良い結果とならないことがあります。
まぶたの重みの原因を明らかにして治療する必要がありますが、病態の把握は容易ではありません。
眼瞼痙攣、顔面神経麻痺、逆まつげ、眉毛の下垂などについてもどうぞご相談下さい。
Q&A
Q.ボツリヌストキシン注射は健康保険適用ができますか?
A.眼瞼痙攣には保険適用可能です。
Q.眼瞼下垂でボツリヌストキシン注射受けていますが、あまり効きません。ボツリヌストキシンが効くような処置をお願いできますか?
A.当院で処置(眼瞼下垂症手術)をして,近所のクリニック等でボツリヌストキシン注射を受けるのは可能です。
Q.眼瞼痙攣と診断されましたが、初めて聞く病気なのですが?
A.眼瞼けいれんはほとんどの方が初めてお聞きになるのではないかと思いますが、実はその患者は非常に多く珍しい病気ではありません。当院で眼瞼下垂の手術を受ける患者さんの半数近くが程度の差があれ眼瞼けいれんを併発しておられます。重症化すると生活がままならないくらいの目が開き難い症状になりますので、早めの治療をお勧めします。
Q.いちのせ形成外科で治療すると眼瞼痙攣が治りますか?
A.眼瞼痙攣はその正体が不明で、決定的な治療法がないとても治療が難しい病気です。大変申し訳ありませんが、当院でも全例の治療が出来るわけではないのが現状です。
特に難治性の眼瞼痙攣の治療をお願いできる先生を大阪・神戸で探すのは難しいため、遠方ですが世界的な眼瞼下垂の名医の松尾清先生(→松尾形成外科 眼瞼クリニック
浜松市)にご相談されることをお勧めすることもあります。